2025年12月24日水曜日

第48回A問題 第52問「グラスゴー・ピッツバーグ脳機能カテゴリー(CPC)」について

 第48回救急救命士国家試験A問題はこちら

52 グラスゴー・ピッツバーグ脳機能カテゴリー〈CPC〉で脳死が含まれるカテゴリーはどれか。1つ選べ。

1 CPC1

2 CPC2

3 CPC3

4 CPC4

5 CPC5


解答 5 11版P.477


【救命士王による回答】


 社会復帰=CPC1、CPC2と定義される。

 統計や論文等でも使用される。


【AIによる回答】


第52問「グラスゴー・ピッツバーグ脳機能カテゴリー(CPC)」について、救急救命士が心肺蘇生後の予後判定を理解する上で重要な指標を解説します。


簡易解説

正解は5です。

CPC(Cerebral Performance Category)は、心停止から蘇生した傷病者の脳機能予後を1〜5の5段階で評価する指標です。CPC1(良好)から数字が大きくなるほど重症度が増し、CPC5は「脳死または死亡」を定義するカテゴリーとなります。心肺蘇生後の臨床研究や統計(ウツタイン様式など)において、社会復帰率を測る非常に重要な分類法です。


詳細解説

CPC(脳機能カテゴリー)は、ピッツバーグ蘇生研究センターによって提唱された評価法で、主に心停止後の神経学的予後を客観的に数値化するために用いられます。救急救命士は、自分が搬送した傷病者がその後どのような経過を辿ったのかを知る際、この指標を目にすることになります。

1. CPC各カテゴリーの詳細

CPCは単なる意識レベルの評価ではなく、「日常生活の自立度」に主眼が置かれています。

  • CPC 1:良好な脳機能(Good Cerebral Performance)

    意識が清明であり、発症前と同じような生活が送れる状態です。軽い神経学的欠落(軽度の麻痺など)があっても、通常の就労や日常生活に支障がない場合を含みます。

  • CPC 2:中等度の脳機能障害(Moderate Cerebral Disability)

    意識はあり、身の回りのことは自立していますが、記憶障害や性格変化、不全麻痺などのために、保護的な環境下での就労(軽作業など)に限定される状態です。

  • CPC 3:重度の脳機能障害(Severe Cerebral Disability)

    意識はありますが、日常生活の全般に介助を必要とする状態です。いわゆる「寝たきり」の状態に近いですが、意思疎通が限定的に可能な場合を指します。

  • CPC 4:植物状態(Coma or Vegetative State)

    昏睡状態、あるいは除脳硬直などの異常姿勢が見られる状態です。環境に対する意味のある反応がなく、覚醒(開眼)はしていても認知機能がない状態(遷延性意識障害)を含みます。

  • CPC 5:脳死または死亡(Brain Death or Death)

    本問の正解です。臨床的な死、あるいは法的な脳死と判定された状態を指します。

2. 救急救命士としての視点と「社会復帰」

救急医療の究極の目的は、単に心拍を再開させる(ROSC)ことではなく、傷病者を「CPC 1または2」の状態で社会復帰させることにあります。

統計学的に、目撃のある心室細動(VF)に対して迅速な除細動が行われた場合、CPC 1〜2の割合が高くなることが知られています。逆に、搬送後にROSCしてもCPC 3〜4となってしまうケースは、現場での蘇生処置の遅れや、搬送中の低酸素状態の継続が原因となることがあります。

3. ウツタイン様式との関連

救急救命士が記録する「ウツタイン様式(心停止傷病者の全国記録)」では、1ヶ月後の生存率とともに、このCPCを用いた機能予後が記録されます。救命士が自分の活動を振り返る際、「1ヶ月後にCPC1で退院した」というデータは、現場での判断や処置が最適であったことを示す最も価値のあるフィードバックとなります。

このように、CPCは医療機関内だけの指標ではなく、プレホスピタルケアの質を客観的に評価するための共通言語として、救命士にとっても欠かせない知識です。

第48回A問題 問53

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53 ウツタイン様式に則り院外心停止に対する救急医療システムを地域間で比較するためには、図(別冊No.8)のどの患者群を対象に検討することが最も適切か。1つ選べ。

1 A

2 B

3 C

4 D

5 É






















解答 4

第48回A問題 第54問「痙攣発作に伴う生理学的変化」について

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54 痙攣発作によって低下するのはどれか。2つ選べ。

1 pH

2 SpO2値

3 体温

4 乳酸値

5 PETCO2(呼気終末二酸化炭素分圧)


解答 1と2 11版P.496


【AIによる回答】


第54問「痙攣発作に伴う生理学的変化」について、代謝性および呼吸性変化の観点から詳しく解説します。


簡易解説

正解は12です。

全身性の痙攣発作(強直間代発作など)では、激しい筋肉の収縮により酸素消費量が急増し、同時に呼吸筋の抑制や気道閉塞が起こるため、$SpO_2$値(経皮的酸素飽和度)が低下します。また、無酸素運動状態となった筋肉で乳酸が大量に産生されること(代謝性アシドーシス)に加え、二酸化炭素の蓄積(呼吸性アシドーシス)も進むため、血液のpHは著明に低下(酸性化)します。


詳細解説

痙攣発作、特に全身性の「大発作(強直間代発作)」は、生体にとって極めて過酷な代謝負荷がかかる状態です。救急救命士は、痙攣そのものを止めることはできませんが、痙攣によって生じる二次的な生理学的悪化を予測し、適切に管理する必要があります。

1. 正解の根拠:なぜpHと$SpO_2$が低下するのか

  • 選択肢1(pH): 痙攣中の体内では、2つの要因によって「アシドーシス(酸血症)」が進行し、pHが低下します。

    1. 代謝性要因: 激しい全身の筋収縮により、酸素供給が追いつかない「無酸素代謝」が行われます。この過程で大量の乳酸が生成され、血液中に放出されます。

    2. 呼吸性要因: 痙攣中は呼吸筋の強直や喉頭痙攣、舌根沈下などにより、有効な換気が行えなくなります。これにより二酸化炭素($CO_2$)が体内に蓄積し、炭酸($H_2CO_3$)が増えることで血液が酸性に傾きます。

  • 選択肢2($SpO_2$値): 前述の通り、呼吸運動の障害による「酸素取り込みの低下」と、激しい筋活動による「酸素消費の増大」が同時に起こります。需要と供給のバランスが著しく崩れるため、動脈血酸素飽和度は急速に低下し、重篤な低酸素血症に陥ります。

2. 他の選択肢(上昇・変動する項目)

  • 選択肢3(体温): 激しい筋収縮は大量の熱を産生します。そのため、長時間続く痙攣(てんかん重積状態など)では、むしろ体温は上昇(高熱)します。

  • 選択肢4(乳酸値): 無酸素運動の結果として筋肉から放出されるため、乳酸値は上昇します。これがpH低下(代謝性アシドーシス)の直接的な原因となります。

  • 選択肢5($P_{ET}CO_2$): 呼吸停止や不十分な換気により、体内の二酸化炭素分圧($PaCO_2$)は上昇します。痙攣直後の呼気や、不十分ながらも行われている換気から測定される$P_{ET}CO_2$は、通常は上昇、あるいは換気が全くできていなければ測定不能となります。

3. 救急救命士としての臨床的視点

痙攣傷病者の救急活動では、痙攣が収まった後の「発作後状態(Postictal state)」の評価が重要です。

  1. 気道・換気の確保: $SpO_2$の回復を図るため、高濃度酸素投与や、必要に応じたBVM(バッグバルブマスク)による補助換気を行います。

  2. pH低下への理解: 痙攣直後のpH低下や乳酸上昇は、発作が収まり有効な換気が再開されれば、通常は速やかに改善に向かいます。しかし、発作が繰り返される場合は、アシドーシスが心機能を抑制し、心停止を招くリスクがあることを念頭に置かなければなりません。

  3. 安全確保: 痙攣中の傷病者を無理に抑え込むことは骨折や横紋筋融解症を助長する恐れがあるため、周囲の危険物を取り除き、頭部を保護するなどの安全管理を優先します。

このように、痙攣という「現象」の裏側で起きている「急激な代謝性・呼吸性変化」を理解することで、発作停止後の迅速な安定化処置に繋げることができます。


プロフィール

  某政令指定都市 指導救命士 指導係長を経て救命士王となる。