54 痙攣発作によって低下するのはどれか。2つ選べ。
1 pH
2 SpO2値
3 体温
4 乳酸値
5 PETCO2(呼気終末二酸化炭素分圧)
解答 1と2 11版P.496
【AIによる回答】
第54問「痙攣発作に伴う生理学的変化」について、代謝性および呼吸性変化の観点から詳しく解説します。
簡易解説
正解は1と2です。
全身性の痙攣発作(強直間代発作など)では、激しい筋肉の収縮により酸素消費量が急増し、同時に呼吸筋の抑制や気道閉塞が起こるため、$SpO_2$値(経皮的酸素飽和度)が低下します。また、無酸素運動状態となった筋肉で乳酸が大量に産生されること(代謝性アシドーシス)に加え、二酸化炭素の蓄積(呼吸性アシドーシス)も進むため、血液のpHは著明に低下(酸性化)します。
詳細解説
痙攣発作、特に全身性の「大発作(強直間代発作)」は、生体にとって極めて過酷な代謝負荷がかかる状態です。救急救命士は、痙攣そのものを止めることはできませんが、痙攣によって生じる二次的な生理学的悪化を予測し、適切に管理する必要があります。
1. 正解の根拠:なぜpHと$SpO_2$が低下するのか
選択肢1(pH): 痙攣中の体内では、2つの要因によって「アシドーシス(酸血症)」が進行し、pHが低下します。
代謝性要因: 激しい全身の筋収縮により、酸素供給が追いつかない「無酸素代謝」が行われます。この過程で大量の乳酸が生成され、血液中に放出されます。
呼吸性要因: 痙攣中は呼吸筋の強直や喉頭痙攣、舌根沈下などにより、有効な換気が行えなくなります。これにより二酸化炭素($CO_2$)が体内に蓄積し、炭酸($H_2CO_3$)が増えることで血液が酸性に傾きます。
選択肢2($SpO_2$値): 前述の通り、呼吸運動の障害による「酸素取り込みの低下」と、激しい筋活動による「酸素消費の増大」が同時に起こります。需要と供給のバランスが著しく崩れるため、動脈血酸素飽和度は急速に低下し、重篤な低酸素血症に陥ります。
2. 他の選択肢(上昇・変動する項目)
選択肢3(体温): 激しい筋収縮は大量の熱を産生します。そのため、長時間続く痙攣(てんかん重積状態など)では、むしろ体温は上昇(高熱)します。
選択肢4(乳酸値): 無酸素運動の結果として筋肉から放出されるため、乳酸値は上昇します。これがpH低下(代謝性アシドーシス)の直接的な原因となります。
選択肢5($P_{ET}CO_2$): 呼吸停止や不十分な換気により、体内の二酸化炭素分圧($PaCO_2$)は上昇します。痙攣直後の呼気や、不十分ながらも行われている換気から測定される$P_{ET}CO_2$は、通常は上昇、あるいは換気が全くできていなければ測定不能となります。
3. 救急救命士としての臨床的視点
痙攣傷病者の救急活動では、痙攣が収まった後の「発作後状態(Postictal state)」の評価が重要です。
気道・換気の確保: $SpO_2$の回復を図るため、高濃度酸素投与や、必要に応じたBVM(バッグバルブマスク)による補助換気を行います。
pH低下への理解: 痙攣直後のpH低下や乳酸上昇は、発作が収まり有効な換気が再開されれば、通常は速やかに改善に向かいます。しかし、発作が繰り返される場合は、アシドーシスが心機能を抑制し、心停止を招くリスクがあることを念頭に置かなければなりません。
安全確保: 痙攣中の傷病者を無理に抑え込むことは骨折や横紋筋融解症を助長する恐れがあるため、周囲の危険物を取り除き、頭部を保護するなどの安全管理を優先します。
このように、痙攣という「現象」の裏側で起きている「急激な代謝性・呼吸性変化」を理解することで、発作停止後の迅速な安定化処置に繋げることができます。
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