2025年12月24日水曜日

第48回A問題 第68問「心原性失神の病態と鑑別」について

第48回救急救命士国家試験A問題はこちら

68 心拍出量の減少により失神を引き起こす疾患はどれか。1つ選べ。

1 低血糖

2 くも膜下出血

3 大動脈弁狭窄症

4 アナフィラキシー

5 一過性脳虚血性発作


解答 3


【AIによる解説】


第68問「心原性失神の病態と鑑別」について、心拍出量の低下というメカニズムを中心に詳しく解説します。


簡易解説

正解は3です。

大動脈弁狭窄症(AS)は、左心室から全身へ血液を送り出す出口にある「大動脈弁」が硬くなって狭くなる疾患です。運動時など、全身がより多くの血液を必要とする場面で、物理的な狭窄のために血液を十分に送り出せず、心拍出量が急激に不足します。その結果、脳への血流が一時的に途絶え、失神(心原性失神)を引き起こします。


詳細解説

失神とは「一過性の脳全般の血流低下による、短時間の意識消失」と定義されます。救急現場では、その原因が「心臓」にあるのか、「脳」にあるのか、あるいは「自律神経」などにあるのかを見極めることが重要です。

1. 正解の根拠:大動脈弁狭窄症と失神

大動脈弁狭窄症(Aortic Stenosis)では、心臓が一生懸命収縮しても、狭い弁の間を血液が通り抜けることができません。

  • 病態: 軽症のうちは代償機能が働きますが、重症化すると心臓のポンプ機能の限界を超えます。

  • 失神のタイミング: 特に労作時(動いた時)に、筋肉などの末梢組織で血管が広がり血液が必要になりますが、心臓からの供給(心拍出量)が追いつかず、脳血流が相対的に不足して失神します。

  • 臨床的意義: ASによる失神は予後不良のサインであり、突然死のリスクが高い「超警戒」すべき病態です。

2. 他の選択肢の分析(意識障害・失神のメカニズム)

  • 選択肢1(低血糖): 脳のエネルギー源である「糖」が不足して意識を失います。これは「血流の低下」ではなく「栄養の欠乏」による意識障害であり、通常は失神の定義(一過性で自然回復する血流障害)には含まれません。

  • 選択肢2(くも膜下出血): 脳動脈瘤の破裂により、急激に脳圧が上昇して意識を失います。これは「心拍出量の減少」が原因ではありません。

  • 選択肢4(アナフィラキシー): 重症のアナフィラキシーショックでは血圧が低下して失神することがありますが、これは血管が異常に拡張して血液が末梢に溜まってしまう「分布異常性ショック」が主因です。

  • 選択肢5(一過性脳虚血発作:TIA): 脳の血管が一時的に詰まりかけることで起こります。これは「心臓からの送り出し(心拍出量)」の問題ではなく、「脳の血管自体」のトラブルです。

3. 失神の3大分類

救急救命士が現場で活用すべき分類は以下の通りです。

分類代表的な疾患・原因メカニズム
反射性(神経調節性)血管迷走神経反射、状況失神自律神経の乱れによる血圧低下・徐脈
起立性低血圧脱水、降圧薬、自律神経不全立ち上がり時の重力による血流低下
心原性大動脈弁狭窄症、不整脈、心筋梗塞心臓のポンプ機能不全による心拍出量減少

4. 救急救命士としての臨床的視点

失神を主訴とする傷病者に接触した際は、以下の「ASの3徴」を念頭に聴取を行います。

  1. 胸痛(心筋への酸素不足)

  2. 失神(脳への血流不足)

  3. 呼吸困難(心不全の兆候)

もし、高齢者が「動いた時に意識を失った」と訴え、心音聴診で(可能であれば)収縮期雑音が聞こえたり、胸痛を伴っていたりする場合は、重症の大動脈弁狭窄症を強く疑い、搬送中も急変(心停止)に対するモニター監視と準備を怠らないようにします。



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プロフィール

  某政令指定都市 指導救命士 指導係長を経て救命士王となる。