98 落雷とそれに伴う雷撃傷について正しいのはどれか。1つ選べ。
1 重度の皮膚熱傷を生じる。
2 落雷による死者数は年々増加している。
3 落雷を避けるため開けた場所では高所に避難する。
4 複数傷病者でも心肺停止傷病者への対応を優先する。
5 落雷を避けるにはできるだけ姿勢を低くし地面に横になる。
解答 4
【AIによる解説】
第98問は、特殊災害である落雷(雷撃傷)の生理的影響と、その特殊なトリアージ基準に関する問題です。雷撃傷は通常の高電圧感電とは異なる特徴を持っており、救急現場での優先順位判断が試されます。
解説:雷撃傷の特殊性と「逆トリアージ」
正解は4です。
通常、多数傷病者が発生した現場(トリアージ)では、心肺停止状態の傷病者は「黒(死亡群)」と判定され、処置の優先順位は低くなります。しかし、雷撃傷に限っては、心肺停止傷病者を優先して処置する「逆トリアージ」が推奨されています。
理由: 落雷による電流が体を通り抜けると、心臓と呼吸中枢が同時に麻痺します。心臓は自律的な回復力(自己復帰)があるため勝手に動き出すことがありますが、呼吸中枢の麻痺は長く続く傾向があります。
呼吸が止まったままだと、二次的に再び心停止(低酸素による心停止)を起こしてしまいます。そのため、迅速に人工呼吸やCPR(心肺蘇生法)を開始すれば、社会復帰できる可能性が他の疾患より極めて高いため、優先的に対応します。
他の選択肢の分析(誤っている記述)
1 重度の皮膚熱傷を生じる:
雷の電流は体の表面を流れる性質(体表放電)があるため、意外にも深い組織の熱傷は少ないのが特徴です。皮膚には「雷紋(リヒテンベルク図形)」と呼ばれるシダの葉のような独特の赤い紋様が現れることがありますが、これは数日で消えることが多く、重度の熱傷ではありません。
2 落雷による死者数は年々増加している:
気象情報の精度向上や避難知識の普及により、日本国内での落雷による直接的な死者数は減少傾向にあります。
3 落雷を避けるため開けた場所では高所に避難する:
雷は高い場所に落ちる性質があるため、高所へ避難するのは極めて危険です。鉄筋コンクリートの建物内や、自動車の中(車体に電気が逃げるため安全)へ避難するのが正解です。
5 姿勢を低くし地面に横になる:
地面に横たわると、近くに落雷した際の「歩幅電圧(地面を伝わる電流)」を全身で受けてしまうため危険です。できるだけ姿勢を低くし、足を閉じてつま先立ちでしゃがむ(地面との接触面積を最小限にする)のが正しい回避姿勢です。
救急救命士としての臨床的視点
雷撃傷の傷病者に対応する際は、以下の点に留意します。
二次災害の防止: 雷雲が停滞している場合、救急隊自身への落雷の危険があります。安全な場所(車内など)へ傷病者を収容してから処置を行います。
鼓膜穿孔と外傷の確認: 落雷時の衝撃波(爆風)により、鼓膜が破れていたり、吹き飛ばされて脊椎損傷を負っていたりすることがあります。意識があっても、全身のくまない評価が必要です。
心電図モニター: 自己心拍が再開した後も、不整脈が出現しやすいため、継続的なモニタリングが不可欠です。
「雷に打たれた心停止は助かる可能性がある」という知識は、現場での絶望的な状況を希望に変える重要な判断基準となります。
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