2026年1月13日火曜日

第47回D問題 問6 50歳の男性。亜硝酸塩を含む肥料を生産する工場で作業中、呼吸困難が出現したため、同僚が救急要請した。  救急隊到着時観察所見:意識清明。呼吸数32/分。脈拍112/分、整。Sp02値92%。日唇や爪先にチアノーゼを認める。工場の産業医からメトヘモグロビン血症の可能性があるといわれた。  正しいのはどれか。

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6 50歳の男性。亜硝酸塩を含む肥料を生産する工場で作業中、呼吸困難が出現したため、同僚が救急要請した。

 救急隊到着時観察所見:意識清明。呼吸数32/分。脈拍112/分、整。Sp02値92%。日唇や爪先にチアノーゼを認める。工場の産業医からメトヘモグロビン血症の可能性があるといわれた。

 正しいのはどれか。1つ選べ。

1 酸素投与は必要ない。

2 肺の傷害が起きている。

3 他の作業員に影響はない。

4 Sp02値は酸素飽和度を反映しない。

5 直ちに二次救急医療機関へ搬送する。


解答 4


この問題は、特殊な中毒症態であるメトヘモグロビン血症における測定機器の限界と、病態生理を問う良問です。

正解:4(SpO2値は酸素飽和度を反映しない)

解説

メトヘモグロビン(Met-Hb)血症では、パルスオキシメータ($SpO_2$)が正確な数値を表示できなくなるのが最大の特徴です。

  • 測定の原理的限界:

    通常のパルスオキシメータは、酸化ヘモグロビンと還元ヘモグロビンの比率を2種類の波長の光で測定しています。しかし、メトヘモグロビンが存在すると光の吸収特性が変わり、実際の酸素飽和度に関わらず、数値が**85%付近に固定(プラトー化)されたり、異常値を示したりします。 そのため、チアノーゼが強く、明らかに酸素不足に見えるのに$SpO_2$が一定の数値から動かない、といった「ガップ(解離)」**が生じます。

  • 臨床的なチアノーゼ:

    メトヘモグロビンが1.5g/dL(全ヘモグロビンの約10%)を超えると、血液がチョコレート色(暗褐色)になり、皮膚や粘膜に強いチアノーゼが現れます。


他の選択肢が誤りである理由

  • 1(酸素投与): メトヘモグロビン自体は酸素を運べないため、残っている正常なヘモグロビンの酸素飽和度を最大限に高める必要があります。高濃度酸素投与は必須です。

  • 2(肺の傷害): この疾患の主病態は「血液(ヘモグロビン)の異常」による運搬障害です。肺自体が直接破壊されているわけではありません。

  • 3(他の作業員への影響): 「亜硝酸塩を含む肥料を生産する工場」という環境要因があるため、他の作業員も同様の曝露を受けている可能性が極めて高く、集団災害(C災害)としての警戒が必要です。

  • 5(搬送先の選定): メトヘモグロビン血症の特効薬である**メチレンブルー(メチルチオニニウム)を常備している、あるいは毒劇物中毒に対応可能な三次救急医療機関(救命救急センター)**へ速やかに搬送すべき事案です。


救急現場でのヒント

現場で「チアノーゼがあるのに$SpO_2$が90%前後で安定している」「高濃度酸素を吸わせても$SpO_2$が上がらない」という状況に遭遇し、かつ化学物質の曝露歴がある場合は、この病態を強く疑うことが重要です。

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プロフィール

  某政令指定都市 指導救命士 指導係長を経て救命士王となる。