51 気道に異常がないにもかかわらず突然の低酸素血症に陥るのはどれか。1つ選べ。
1 肺癌
2 気管支拡張症
3 肺血栓塞栓症
4 肺結核後遺症
5 COPD(慢性閉塞性肺疾患)
解答 3 11版P.454
【AIによる回答】
第51問「突然の低酸素血症を来す疾患」について、肺の換気と血流のバランス(換気血流比不均衡)の観点から詳しく解説します。
簡易解説
正解は3です。
肺血栓塞栓症は、下肢などの静脈で形成された血栓が血流に乗って肺動脈を閉塞させる疾患です。この場合、肺胞での「換気(空気の出入り)」に異常はありませんが、閉塞部より先の「血流」が途絶えるため、取り込んだ酸素を血液に渡せなくなります。これを「換気血流比不均衡(死腔の増大)」と呼び、気道に物理的な閉塞がなくても、極めて短時間で重篤な低酸素血症に陥るのが特徴です。
詳細解説
救急現場において「気道は開通しているのに酸素飽和度が上がらない」という病態は、救急救命士にとって最も警戒すべき状況の一つです。本問は、肺の機能である「ガス交換」の仕組みに基づいた鑑別能力を問うています。
1. 肺血栓塞栓症(PE)の病態生理
肺血栓塞栓症は、主に下肢の深在静脈血栓症(DVT)から剥がれた血栓が、右心房・右心室を経て肺動脈に詰まることで発症します。
肺の機能は、空気を吸い込む「換気」と、毛細血管に血液を流す「血流」がセットになって初めて成立します。肺血栓塞栓症では、気管や気管支といった気道系には全く異常がないため、肺胞までは酸素が届きます。しかし、その先の血管が塞がっているため、酸素を血液に取り込むことができません。このように、換気は行われているが血流がない状態を「死腔(しくう)の増大」と呼び、これが「突然の低酸素血症」を招く直接的な原因となります。
2. 他の選択肢の特性と比較
選択肢1(肺癌): 腫瘍による気道閉塞や胸水の貯留などで低酸素になることがありますが、通常は経過が緩徐であり、本問のような「突然の」変化は典型的ではありません。
選択肢2(気管支拡張症): 気管支が慢性的に拡張・変形し、感染や粘液貯留を繰り返す疾患です。低酸素血症を伴いますが、基本的には慢性の経過をたどります。
選択肢4(肺結核後遺症): 過去の結核による肺の線維化や肺活量の減少が原因です。これも慢性的な呼吸不全の病態です。
選択肢5(COPD:慢性閉塞性肺疾患): 肺気腫や慢性気管支炎により「気道」に慢性的な閉塞(狭窄)が生じる疾患です。増悪時には急激な悪化も見られますが、本問の前提条件である「気道に異常がない」という点に反します。
3. 救急救命士としての現場視点
肺血栓塞栓症の傷病者は、突然の呼吸困難、胸痛、頻呼吸を訴えますが、肺音を聴診しても喘鳴(ぜんめい)などの異常音が聞こえないことが多々あります。これを「静かな肺(Silent Chest)」と呼ぶこともあります(気道閉塞ではないため)。
救急現場では以下の3点に注目します。
リスク因子の確認: 長期の臥床、手術後、長距離移動(エコノミークラス症候群)、悪性腫瘍の既往など。
身体所見: 片側下肢の浮腫や疼痛(DVTの疑い)。
バイタルサイン: $SpO_2$の著明な低下があるにもかかわらず、肺音に異常がなく、頻脈や血圧低下(閉塞による右不全)を伴う場合。
このような場合、救急救命士は気道管理を継続しつつ、高次医療機関へ「肺塞栓を強く疑う」旨を伝え、迅速な搬送と、循環虚脱(ショック)への備えを行うことが求められます。
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