1 92歳の男性。介護施設入所中。数日前から衰弱が進行し、本人と家族との希望で施設で看取る予定であった。本日朝、突然痙攣を起こしたため、あわてた職員が救急要請した。
救急隊到着時観察所見:心肺停止状態で、職員により一次救命処置が行われている。心肺蘇生を続けたが、心電図では心静止が続いている。DNARの事前指示書がみつかったため、かかりつけ医に連絡したところ、「すぐに向かう」と回答を得たため、現場で待機した。
この救急隊が現場で待機したことは「生命倫理に関する原則」のどれに該当するか。1つ選べ。
1 自律の尊重
2 善行の原則
3 公正の原則
4 正義の原則
5 無危害の原則
解答 1
【AIによる解説】
第1問(生命倫理)は、近年救急現場でも非常に重要視されているDNAR(蘇生不要指示)と生命倫理の原則に関する問題です。
解説:生命倫理の四原則
正解は1(自律の尊重)です。
生命倫理には、ビーチャムとチルドレスが提唱した「四原則」という世界的な指針があります。今回のケースがなぜ「自律の尊重」に当たるのかを解説します。
1 自律の尊重(Respect for Autonomy):
これは「患者本人の決定権を尊重する」という原則です。
本事例では、本人と家族が「施設で看取る(積極的な延命を望まない)」という意思を持っており、その証拠としてDNARの事前指示書が存在していました。
救急隊が、本人の意思(自律)を尊重し、指示書やかかりつけ医の指示に従って不必要な蘇生を中止・待機したことは、この原則を遵守した行動と言えます。
他の選択肢(生命倫理の四原則+α)の解説
2 善行の原則(Beneficence):
「患者に利益をもたらす」という原則です。医学的な治療を行い、健康を回復させることがこれに当たります。本事例では、蘇生を中止することが本人の「安らかな最期」という利益にかなう側面もありますが、選択肢としては1が最も直接的です。
3・4 公正・正義の原則(Justice):
「医療資源を公平に分配する」という原則です。人種や経済状況で差別せず、平等に治療を行うことを指します。
5 無危害の原則(Non-maleficence):
「患者に危害を加えない」という原則です。効果のない、あるいは苦痛を与えるだけの処置を避けることを意味します。
救急救命士としての臨床的視点:DNAR対応の現実
救急現場でのDNAR対応は非常にデリケートであり、以下のステップがガイドライン(救急蘇生法を巡る倫理的課題に関するガイドライン等)で推奨されています。
意思の確認:
事前指示書だけでなく、その場の家族の意向も確認します。本事例のように「職員が慌てて呼んでしまった」というケースは多く、家族の総意がどこにあるかを瞬時に見極める必要があります。
医師との連携:
救急隊の判断だけで蘇生を完全に中止することは法的なリスクを伴うため、必ずかかりつけ医や指導医にオンラインで連絡を取り、指示を仰ぐことが重要です。
看取りの支援:
蘇生を行わない(あるいは中止する)と判断した後は、単に放置するのではなく、医師が到着するまで傷病者の尊厳を守り、家族の心のケアを行うことも救急隊の大切な役割です。
まとめ:
「患者本人の決めた生き方(死に方)を守る = 自律の尊重」と結びつけて覚えましょう。国家試験では「四原則」の内容を混同しないように整理しておくことが大切です。
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