21 50歳の男性。妻がトイレで倒れた夫をみつけ、救急要請した。
救急隊到着時観察所見:意識清明。呼吸数18/分。脈拍54/分、整。血圧96/62mmHg。体温36.0°C。SpO2値99%。顔面蒼白と冷汗とを認める。側頭部に挫傷を認める。「排尿中に目の前が白くなり気が遠くなった。」と訴える。
この病態の成因はどれか。1つ選べ。
1 髄膜への刺激
2 心収縮力の減少
3 頭部への強い衝撃
4 エネルギー源の枯渇
5 迷走神経系の活動亢進
解答 5
【AIによる回答】
第21問は、日常的に遭遇することの多い失神の一種、「血管迷走神経性失神(反射性失神)」に関する問題です。
解説:迷走神経反射と排尿失神
正解は5(迷走神経系の活動亢進)です。
傷病者のエピソードとバイタルサインから、一時的な自律神経の乱れによる失神であることが読み取れます。
5 迷走神経系の活動亢進:
状況(排尿中): 排尿や排便、強い痛み、精神的ストレスなどは、副交感神経である「迷走神経」を過剰に刺激する引き金になります。これを「状況失神」と呼び、迷走神経反射の一種です。
メカニズム: 迷走神経が強く働くと、「心拍数の低下(徐脈)」と「末梢血管の拡張(血圧低下)」が同時に起こります。その結果、脳への血流が一時的に遮断され、意識を失います。
身体所見: 脈拍54/分(徐脈傾向)、血圧96/62mmHg(低め)、顔面蒼白、冷汗などは、この反射が起きている際、あるいは起きた直後の典型的なサインです。
他の選択肢の分析
1 髄膜への刺激:
くも膜下出血などで見られますが、激しい頭痛や項部硬直が主症状であり、排尿中の失神とは機序が異なります。
2 心収縮力の減少:
心筋梗塞などの心原性ショックを指しますが、本症例の「意識清明(回復している)」という経過や排尿中という状況には馴染みません。
3 頭部への強い衝撃:
側頭部の挫傷は「失神して倒れた結果」受傷したものであり、失神の「原因(成因)」ではありません。
4 エネルギー源の枯渇:
低血糖などを指しますが、通常は「気が遠くなった」後に自然に、かつ速やかに意識清明まで回復することは稀です。
救急救命士としての臨床的視点:失神の「3つの鑑別」
「危ない失神」を見極める:
迷走神経反射自体は予後良好(休めば治る)ですが、現場では「心原性失神(不整脈など)」や「大動脈解離・心タンポナーデ」による失神でないかを確認することが最優先です。本症例は「排尿」という明確な誘因があるため、反射性の可能性が高いと判断できます。
二次的外傷の評価:
失神そのものよりも、倒れた際に頭を打ったことによる「外傷性頭蓋内出血」の方がリスクになる場合があります。側頭部の挫傷があるため、病院では頭部CT検査などが行われることになります。
前駆症状の確認:
「目の前が白くなる」「気分が悪くなる」といった前兆(前駆症状)があるのは、反射性失神の特徴です。逆に、前触れもなく「いきなりスイッチが切れるように倒れる」場合は、不整脈などの心原性失神を強く疑います。
まとめ:
「排尿・排便・痛み + 徐脈・血圧低下 = 迷走神経反射(活動亢進)」
このパターンを覚え、現場では「倒れた原因」と「倒れた後のケガ」の両面からアセスメントしましょう。
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