2026年1月5日月曜日

第48回D問題 第36問 高所からの墜落に伴う重症骨盤骨折の疑いと、外傷初期診療における「骨盤の安定化」を問う問題

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36 62歳の男性。建築作業中に約5mの足場から墜落し受傷し、同僚が救急要請した。

 救急隊到着時観察所見:意識JCS1。呼吸数32/分。脈拍120/分、整。血圧90/60mmHg。SpO2値95%。右殿部痛および右下肢の外転外旋を認める。右下肢に圧痛・変形はない。ヘルメットを装着しており、頭部に外傷痕はない。胸腹部に圧痛はない。

 この傷病者に対する対応で適切なのはどれか。1つ選べ。

1 下肢の副子固定

2 骨盤動揺の確認

3 骨盤固定具の装着

4 ログロールでの背面観察

5 セミファウラー位での搬送


解答 3


【AIによる回答】


第36問は、高所からの墜落に伴う重症骨盤骨折の疑いと、外傷初期診療における「骨盤の安定化」を問う問題です。


解説:骨盤骨折のアセスメントと処置

正解は3(骨盤固定具の装着)です。

5mという高所からの墜落(高エネルギー外傷)であり、以下の所見から骨盤骨折による出血性ショックの可能性を最優先で考慮する必要があります。

  • ショック状態: 脈拍120/分(頻脈)、血圧90/60mmHg(低血圧)であり、体内で大量出血が起きているサインです。

  • 右下肢の外転外旋: 骨盤環が破壊されると、骨格の支えを失い、下肢が不自然な方向(外側に開いて回る)を向くことがあります。

  • 3 骨盤固定具の装着:

    骨盤骨折(特に不安定型)は、骨盤腔内に数リットルの出血を招く「致死的血管損傷」の原因となります。現場で骨盤固定具(サムスリングなど)を装着することで、骨盤の容積を縮小させ、自己タンポナーデ効果(圧迫止血)と骨折部の安定化を図ります。これは「防ぎ得る外傷死(PATD)」を防ぐための最優先処置です。


他の選択肢の分析

  • 1 下肢の副子固定:

    「右下肢に圧痛・変形はない」とあるため、大腿骨や下腿骨の骨折の優先度は低いです。

  • 2 骨盤動揺の確認:

    外傷初期診療(JPTECなど)において、骨盤骨折が疑われる場合に骨盤を左右から押して動かす「動揺性の確認」は禁忌です。一度固まりかけた血栓(かさぶた)を剥がし、致命的な再出血を招く恐れがあるためです。

  • 4 ログロールでの背面観察:

    骨盤骨折が疑われる傷病者を横に向ける(ログロール)と、骨盤がさらに不安定になり出血を悪化させます。背面観察が必要な場合は、複数人で体位変換を最小限にするか、骨盤固定を行った後に行います。

  • 5 セミファウラー位での搬送:

    血圧が低下しているショック状態では、脳血流を維持するために「仰臥位(平らな状態)」が原則です。上半身を起こすセミファウラー位は不適切です。


救急救命士としての臨床的視点:高エネルギー外傷の戦略

  1. 「触らない、動かさない」:

    骨盤骨折が疑われる場合、触診で「痛いですか?」と確認する程度にとどめ、物理的に骨盤を揺さぶる手技は絶対に避けます。

  2. スピード搬送(ロード&ゴー):

    骨盤骨折による出血は現場で止めることができません。骨盤固定具を速やかに装着し、脊椎固定(バックボード)を行った上で、直ちに手術や血管塞栓術(IVR)が可能な高度救命救急センターへ搬送します。

  3. 内臓損傷の合併:

    骨盤にそれだけの衝撃が加わっているということは、後腹膜や腹腔内の臓器損傷も合併している可能性が高いと考え、全身観察を継続します。

まとめ:

高エネルギー外傷 + ショック + 下肢の変位 = 骨盤骨折を疑い、動かさず即固定!

骨盤を「押さない」というのは、試験でも実現場でも極めて重要な鉄則です。

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プロフィール

  某政令指定都市 指導救命士 指導係長を経て救命士王となる。