6 18歳の女性。朝食にパンを食べた後ランニングをしたところ気分不良となったため、友人が救急要請した。
救急隊到着時観察所見:意識JCS20。呼吸数28/分、整。脈拍135/分、整。血圧80/60mmHg。SpO2値90%(室内気)。皮膚は紅潮している。自己注射用アドレナリンは所持していない。
酸素投与を開始した後に、行う処置として適切なのはどれか。1つ選べ。
1 静脈路確保の指示要請をする。
2 喉頭鏡で異物の有無を確認する。
3 声門上気道デバイスの指示要請をする。
4 バッグ・バルブ・マスク人工呼吸を行う。
5 アドレナリン1mg静脈内投与の指示要請をする。
解答 1
【AIによる回答】
第6問は、アナフィラキシーショックへの対応に関する問題です。特に「食物依存性運動誘発アナフィラキシー」という特定の病態が示唆されています。
解説:アナフィラキシーショックの初期対応
正解は1(静脈路確保の指示要請をする)です。
この傷病者は、特定の食物(パン=小麦)を摂取した後の運動(ランニング)によって、急激な血圧低下(80/60mmHg)、意識障害(JCS 20)、皮膚の紅潮、低酸素血症(SpO2 90%)を呈しており、アナフィラキシーショックの状態にあります。
1 静脈路確保の指示要請:
救急救命士の特定行為プロトコルにおいて、アナフィラキシーによりショック状態(生理学的指標の著しい悪化)に陥っている場合、速やかな「静脈路確保および輸液(生理食塩液の投与)」が適応となります。これにより、血管拡張と血管透過性亢進による相対的な脱水(虚脱)を補正し、循環の維持を図ります。
他の選択肢の分析
2・3・4(気道・換気処置):
呼吸数28回/分で自発呼吸があり、異物による窒息の機転もありません。現時点では、気道デバイスの挿入や人工呼吸よりも、循環の維持(輸液)や薬剤投与へのルート確保が優先されます。
5 アドレナリン1mg静脈内投与:
ここが最大のひっかけポイントです。
アナフィラキシーに対するアドレナリン投与は、通常「筋肉内投与(0.3mg)」が第一選択です。
静脈内投与(1mg)は、心停止状態あるいは心停止直前において、極めて慎重な判断のもとに行われるものであり、この症例(脈拍135回/分)でいきなり1mgを静脈内投与すると、致死的な不整脈や高血圧を招く危険があります。また、救急救命士の特定行為としての薬剤投与(心拍再開前)は、主に「心停止状態」が対象となります。
救急救命士としての臨床的視点:FDEIAと救急活動
食物依存性運動誘発アナフィラキシー(FDEIA):
特定の食べ物だけ、あるいは運動だけでは起きないのに、「食べてから動く」ことで発症する特殊なアレルギーです。中高生から成人に見られるのが特徴です。
体位の管理:
アナフィラキシーで血圧が下がっている際、急に上半身を起こしたり立ち上がらせたりすると、心臓への還流血液が途絶えて心停止(空の心臓症候群)を招くことがあります。「仰臥位で足を高くする(ショック体位)」を保つことが非常に重要です。
アドレナリンの筋肉内投与(エピペン等):
もし本人が自己注射薬(エピペン)を持っていれば、救急隊がその場で使用を補助(または代行)できますが、持っていない場合は病院への早期搬送と、特定行為によるルート確保・輸液が鍵となります。
まとめ:
「アナフィラキシーでショック = 仰臥位 + 輸液 +(持っていれば)エピペン補助」
薬剤の「量」と「投与経路」の間違いには、試験でも現場でも細心の注意を払いましょう。
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