111 交通事故傷病者で腸管損傷を想起する腹部の身体所見はどれか。1つ選べ。
1 腫瘤の触知
2 腹壁の緊張
3 腸蠕動音の亢進
4 動脈拍動の触知
5 腹壁静脈の怒張
解答 2
【AIによる解説】
第111問は、交通事故などの強い衝撃によって起こる腹部鈍的外傷(特に腸管損傷)の身体所見に関する問題です。
解説:腸管損傷と腹膜刺激症状
正解は2です。
交通事故で腹部に強い打撃を受け、腸管(小腸や大腸)が損傷して内容物が腹腔内に漏れ出すと、化学的または細菌性の腹膜炎を引き起こします。
2 腹壁の緊張:
腹膜が刺激されると、痛みから身を守ろうとして腹筋が反射的に硬くなります。これを「筋性防御(デファンス)」と呼びます。さらに炎症が進むと、触らなくてもお腹が板のように硬くなる「板状硬」という状態になります。これらは腸管損傷などの腹腔内臓器損傷を強く示唆する重要な所見です。
他の選択肢の分析
1 腫瘤(しゅりゅう)の触知:
しこりが触れる状態です。外傷の現場で急性に腫瘤が触れることは稀であり、むしろ癌や慢性的な疾患を疑う所見です。
3 腸蠕動音の亢進:
腸が活発に動いている音です。食中毒やイレウス(腸閉塞)の初期には聞こえますが、外傷で腹膜炎が起きると、逆に腸の動きが止まってしまうため、腸蠕動音は「減弱」または「消失」します。
4 動脈拍動の触知:
痩せた人の腹部で腹部大動脈の拍動が見えることはありますが、これが腸管損傷のサインになることはありません。
5 腹壁静脈の怒張:
お腹の表面の静脈が浮き出ている状態で、主に肝硬変などの慢性疾患(門脈圧亢進症)で見られる所見です。
救急救命士としての臨床的視点:シートベルト痕に注目
交通事故現場で腹部損傷を疑う際、非常に重要な指標となるのが「シートベルト痕(シートベルト・サイン)」です。
受傷機転の確認:
腹部にシートベルトの形に沿った皮下出血(挫創)がある場合、その直下の腸管や腰椎に強いエネルギーが加わったことを意味します。これを認めたら、腹痛が軽くても内部損傷を強く疑います。
反跳痛(リバウンド・テンダネス)の確認:
腹壁をそっと押して、パッと離した瞬間に激痛が走る所見です。これも腹膜炎を示す重要なサインです。
内臓損傷の二峰性:
受傷直後は症状が軽くても、数時間経ってから炎症が広がり、急激に腹痛が悪化することがあります。現場での継続的な観察が欠かせません。
「お腹が硬い(筋性防御)」というサインは、体の中からの「助けて」という信号です。これを見逃さず、外科的処置が可能な病院へ迅速に搬送することが救急活動の肝となります。
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