113 骨盤外傷について正しいのはどれか。1つ選べ。
1 背面観察は省略する。
2 高齢者は転倒だけで骨折を生じる。
3 骨盤固定具は第5腰椎の高さに装着する。
4 開放創からの出血に対してガーゼを挿入する。
5 死亡原因の多くは血液分布異常性ショックである。
解答 2
第113問は、救急現場において特に生命に直結する骨盤外傷の知識を問う問題です。骨盤骨折は、大量出血や合併症のリスクが非常に高く、正確な評価と処置が求められます。
解説:高齢者の骨盤骨折の特徴
正解は2です。
2 高齢者は転倒だけで骨折を生じる:
高齢者は加齢により骨粗鬆症が進んでいることが多く、骨が非常にもろくなっています。若年者であれば交通事故などの高エネルギー外傷でしか起こらないような骨盤骨折も、高齢者の場合は「自宅のフローリングで尻もちをついた」程度の低エネルギーな転倒で容易に発生します。
これを「脆弱性骨折」と呼び、見た目に大きな外傷がなくても激しい腰痛や歩行不能を訴える場合は骨盤骨折を疑う必要があります。
他の選択肢の分析(誤っている記述)
1 背面観察は省略する:
骨盤外傷を疑う場合でも、背面観察は必須です。臀部や仙骨部の皮下出血、開放創、骨の変形を確認するためです。ただし、骨盤が不安定な場合は「ログロール(横向きにする処置)」によって出血を悪化させるリスクがあるため、最小限の人数で慎重に行うか、状況により判断が必要になります。
3 骨盤固定具は第5腰椎の高さに装着する:
固定具(骨盤ベルト)を装着する適切な位置は、腰ではなく「大転子(だいてんし:太ももの付け根の外側の出っ張り)」の高さです。
高い位置(腰椎付近)で締めても、開いた骨盤を締める効果が得られず、逆に腹部臓器を圧迫する恐れがあります。
4 開放創からの出血に対してガーゼを挿入する:
外傷の止血において、傷口の奥へガーゼを詰め込む(パッキング)処置は、感染リスクやさらなる組織損傷を招くため、救急現場(プレホスピタル)では原則行いません。清潔なガーゼで圧迫止血を行うのが基本です。
5 死亡原因の多くは血液分布異常性ショックである:
骨盤骨折の主な死因は、骨折部や周囲の血管(静脈叢や動脈)からの大量出血による「循環血液量減少性ショック」です。骨盤内には数リットルの血液が溜まるスペースがあるため、外見上は出血が見えなくても、体内で致死的な出血が起こります。
救急救命士としての臨床的視点:骨盤の安定性確認
現場で骨盤外傷を疑った際、以下のことに注意します。
「骨盤を揺らさない」:
かつては骨盤を左右から押して安定性を確認していましたが、現在は推奨されません。一度の圧迫で形成された血腫(血の塊)を壊し、再出血を招く恐れがあるためです。
早期の固定:
骨盤環が壊れている可能性がある場合(不安定型骨折)、早急に骨盤固定具を装着して容積を小さくし、止血を促します。
意識下での「痛み」の評価:
「お腹が痛い」という訴えが、実は骨盤骨折による後腹膜出血の痛みであることも少なくありません。股関節付近を動かした時に強い痛みがある場合は、骨盤骨折を念頭に置きます。
高齢者の「ただの転倒」が、実は命に関わる骨盤骨折である可能性を常に忘れてはいけません。
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