2025年12月24日水曜日

第48回A問題 第114問 穿通外傷(刺創)における異物の取り扱いに関する救急医学の基本原則を問う問題

 第48回救急救命士国家試験A問題はこちら

114 腹部をナイフで刺されたままの状態の場合、ナイフを抜かずに固定する理由はどれか。1つ選べ。

1 紛失を防ぐ。

2 現場を保存する。

3 出血の助長を防ぐ。

4 感染の拡大を防ぐ。

5 救急隊員の負傷を防ぐ。


解答 3


【AIによる解説】


第114問は、穿通外傷(刺創)における異物の取り扱いに関する救急医学の基本原則を問う問題です。


解説:刺入物の固定と止血のメカニズム

正解は3です。

体にナイフなどの刃物や異物が刺さったままの状態を「留置異物」と呼びます。現場でこれを「抜かない」のが鉄則です。

  • 3 出血の助長を防ぐ:

    刺さっているナイフそのものが、損傷した血管や内臓を圧迫し、「栓(ふた)」の役割(タンポナーデ効果)を果たしています。

    • もし現場で不用意に抜いてしまうと、圧迫されていた血管から一気に大量出血が始まり、コントロール不能なショックに陥る危険があります。

    • また、抜く際や再度刺さる際の振動で、さらに内部の組織を傷つける二次損傷の恐れもあります。

    • そのため、ナイフが動かないように厚手のガーゼや包帯などでしっかりと「根元を固定」して、そのままの状態で医療機関へ搬送し、手術室で医師が抜去と止血を同時に行うのが最も安全な手順です。


他の選択肢の分析

  • 1 紛失を防ぐ / 2 現場を保存する:

    これらは証拠保全や刑事捜査上の観点(警察の役割)としては意味がありますが、傷病者の救命を目的とする「医療・救急活動の理由」としては適切ではありません。

  • 4 感染の拡大を防ぐ:

    ナイフを抜かないことで外気との接触は多少制限されるかもしれませんが、感染防止が「抜かない最大の理由」ではありません。

  • 5 救急隊員の負傷を防ぐ:

    隊員の安全確保は重要ですが、処置の判断基準はあくまで傷病者の生命維持にあります。


救急救命士としての臨床的視点:留置異物の管理

現場で刺創(さしきず)の傷病者に対応する際は、以下のポイントを徹底します。

  1. 触れない・動かさない:

    ナイフに触れるのは固定する時最小限にし、絶対に引き抜こうとしたり、角度を変えたりしてはいけません。

  2. 根元の固定:

    ドーナツ状に巻いたガーゼなどをナイフの根元に当て、テープや包帯で「ナイフが体と一体化して動かない」ように固定します。搬送中の揺れでナイフが揺れないようにすることが重要です。

  3. 内臓脱出の対応:

    もしナイフの横から腸などの臓器が飛び出している(内臓脱出)場合は、無理に中に戻そうとせず、清潔な生理食塩水を含ませたガーゼなどで覆い、乾燥を防いで搬送します。

「抜けば出血が止まらなくなる」という恐怖感を持ち、慎重にそのままの状態で外科医にバトンタッチすることが、救急現場での最大の使命です。

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プロフィール

  某政令指定都市 指導救命士 指導係長を経て救命士王となる。