2025年12月24日水曜日

第48回A問題 第77問「維持透析傷病者と呼吸困難」について

  第48回救急救命士国家試験A問題はこちら

77 維持透析傷病者の呼吸困難の原因として最も考えられる病態はどれか。1つ選べ。

1 肺炎

2 溢水

3 肺血栓塞栓症

4 高カリウム血症

5 代謝性アルカローシス


解答 2


【AIによる解説】


第77問「維持透析傷病者と呼吸困難」について、腎不全に伴う水分管理の破綻という観点から詳しく解説します。


簡易解説

正解は2です。

維持透析(人工透析)を受けている傷病者は、腎機能が著しく低下しているため、尿によって水分を排出することが困難です。透析と透析の間に水分摂取量が排出量を上回ると、体内に余剰な水分が蓄積し、溢水(いっすい)状態となります。この水分が肺に漏れ出すことで「肺水腫」を引き起こし、激しい呼吸困難の原因となります。これは透析患者の救急要請理由として最も頻度が高く、かつ緊急性の高い病態です。


詳細解説

透析患者の身体は、透析によって「水分と老廃物のバランス」を強制的にリセットすることで保たれています。このバランスが崩れた際に現れる徴候を理解することが、救急現場での適切な評価に繋がります。

1. 正解の根拠:溢水(いっすい)と呼吸困難

透析患者において、体重の増加はそのまま「水の蓄積」を意味します。

  • メカニズム: 血管内に収まりきらなくなった水分は、血管外へと漏れ出します。これが下肢に溜まれば「浮腫(むくみ)」になりますが、肺の肺胞に溜まると酸素交換を妨げる「肺水腫」になります。

  • 症状: 傷病者は「息が吸えない」「胸が苦しい」と訴え、横になると苦しさが増すため起坐呼吸をとります。また、ピンク色の泡沫状の痰が出たり、聴診でパチパチという音(捻髪音)が聞こえたりするのも特徴です。

2. 他の選択肢の分析

  • 選択肢1(肺炎): 免疫力が低下している透析患者にとって肺炎は重要ですが、呼吸困難の「最も直接的な原因」としては、透析スケジュールに関連して急激に悪化する「溢水」の方が頻度・緊急度ともに高いです。

  • 選択肢3(肺血栓塞栓症): シャント(透析用の血管)トラブル等に関連して起こる可能性はありますが、維持透析患者の呼吸困難において最も典型的な病態ではありません。

  • 選択肢4(高カリウム血症): 透析患者の致死的な合併症ですが、主な症状は致死的不整脈(心停止)や筋力低下であり、直接的に「呼吸困難」を主訴とすることは稀です(心不全を二次的に引き起こせば別ですが、直接的な病態ではありません)。

  • 選択肢5(代謝性アルカローシス)× → 〇 代謝性アシドーシス:

    腎不全では酸を排出できないため、通常は代謝性アシドーシスに傾きます。これを補うために呼吸を速くして二酸化炭素を逃がそうとする「クスマウル呼吸」が見られることはありますが、アルカローシスにはなりません。

3. 救急救命士としての臨床的視点:現場でのチェックポイント

透析傷病者の呼吸困難を診る際は、以下の情報を迅速に収集します。

  1. 次回の透析はいつか: 透析直前であれば、水分が最も溜まっている時期であり、溢水の可能性が極めて高くなります。

  2. 体重の変化: 「前回の透析後から何キロ増えたか」を確認します。通常、中2日あく週末などは体重が増えやすく、リスクが高まります。

  3. バイタルサイン: 溢水では心臓への負荷から血圧が著明に上昇していることが多いです。逆に、血圧が低い場合は心原性ショックや重症感染症など別の病態を疑う必要があります。

  4. 処置: 肺水腫が疑われる場合は、高濃度酸素を投与し、心負荷を軽減するために起坐位(上半身を起こした姿勢)で搬送します。

このように、透析患者における呼吸困難は「水が出せないことによる溺水状態(肺水腫)」を最優先に疑い、迅速に透析治療が可能な医療機関へと繋ぐことが救命の鍵となります。

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プロフィール

  某政令指定都市 指導救命士 指導係長を経て救命士王となる。