48 胸骨圧迫中に心臓から大動脈に送り出される血流量と同等なのはどれか。1つ選べ。
1 脳血流量
2 冠血流量
3 肺血流量
4 腎血流量
5 皮膚血流量
解答 3 11版P.483
【AIによる回答】
第48問「胸骨圧迫中の血行動態」について、体循環と肺循環の解剖学的・生理学的な関係を踏まえて詳しく解説します。
簡易解説
正解は3です。
心臓(右心室と左心室)は直列に配置されたポンプであり、正常な生理状態でも、心肺蘇生(CPR)による受動的な血流維持状態でも、「左心室から大動脈へ送り出される血液量(体循環)」と「右心室から肺動脈へ送り出される血液量(肺循環)」は常に等しくなります。1・2・4・5の各臓器への血流は、大動脈に送り出された全血流量の一部が各動脈へ分流したものであるため、全血流量と同等にはなりません。
詳細解説
胸骨圧迫(CPR)中の循環生理を理解することは、救急救命士が質の高い蘇生技術を提供する意義を深く認識するために不可欠です。本問は、循環器系の基本的な構造である「直列回路」の概念を問う良問です。
1. 正解の根拠:直列回路としての循環系
ヒトの循環系は、「右心系(静脈系・肺循環)」と「左心系(動脈系・体循環)」が一本の輪のように繋がった直列の構造をしています。
胸骨圧迫によって心臓が圧迫されると、左心室からは大動脈へ、右心室からは肺動脈へと血液が押し出されます。このとき、閉鎖回路内を血液が移動するため、左心から大動脈に流出した血液量(体心拍出量)と、右心から肺へ送られた血液量(肺血流量)は、物理的な原理として必ず一致します。
もし肺血流量が体心拍出量より少なければ、肺に血液が滞り、逆に多ければ体循環が破綻してしまいます。したがって、CPR中であっても「心臓から送り出される全血流量 = 肺を流れる全血流量」という関係が成立します。
2. 他の選択肢(分流)の解説
大動脈へ送り出された血液(100%)は、その後、各臓器へと枝分かれ(並列回路)して配分されます。
選択肢1(脳血流量): 全心拍出量の約15%程度です。CPR中はさらに低下し、脳機能を維持するための最低限の血流確保が課題となります。
選択肢2(冠血流量): 心筋自体を養う血流で、全心拍出量の約5%程度です。CPRにおいては、圧迫を解除した際(拡張期)の「大動脈圧と右心房圧の差(冠灌流圧)」が自己心拍再開(ROSC)の鍵を握ります。
選択肢4(腎血流量): 正常時は全心拍出量の約20〜25%と非常に多いですが、CPRのような低流量状態では、生体維持のために優先順位が下げられ(代償機構)、著しく減少します。
選択肢5(皮膚血流量): 全心拍出量の一部に過ぎず、ショック状態やCPR中には末梢血管が収縮するため、血流はほとんど遮断されます。
3. 救急救命士としての臨床的意義
胸骨圧迫中の「肺血流量」が「体心拍出量」と等しいということは、呼気終末二酸化炭素分圧(EtCO_2)の重要性に直結します。
肺へ送られる血液が多ければ、それだけ組織で産生された二酸化炭素が肺へ運ばれ、呼気として排出されます。つまり、救助者が行う胸骨圧迫の質が高ければ、肺血流量が増え、EtCO_2の値も上昇します。
救命士が現場でEtCO_2モニターを活用するのは、単に換気を確認するためだけではなく、肺血流量(=体心拍出量=胸骨圧迫の質)をリアルタイムで評価し、質の高いCPRを維持するためなのです。
このように、解剖学的な「直列構造」を理解することで、なぜ特定のモニター数値が重要なのかという臨床的な根拠までを繋げて考えることができます。
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