6 78歳の男性。腹痛を主訴に救急要請した。
救急隊到着時観察所見:意識清明。呼吸数28/分。脈拍108/分、整。血圧98/60mmHg。筋性防御は認めず、黒色の軟便を失禁していた。
最も疑われる病変部位はどれか。1つ選べ。
1 胃・十二指腸
2 胆嚢
3 虫垂
4 結腸
5 直腸
解答 1
【AIによる解説】
第6問は、消化管出血の部位と便の性状(アセスメント)に関する問題です。便の状態から、体内のどこでトラブルが起きているかを推測する能力が問われています。
解説:黒色便(タール便)と出血部位
正解は1(胃・十二指腸)です。
1 胃・十二指腸(上部消化管):
胃や十二指腸などの「上部消化管」から出血すると、血液中のヘモグロビンが胃酸と混ざり、酸化されて黒色(黒光りするタール状)に変化します。
これを「タール便(メレナ)」と呼びます。イカ墨や海苔の佃煮のような、特有の臭いを伴う黒い軟便が特徴です。
本症例では、血圧がやや低く(98/60mmHg)、脈拍が速い(108/分)ことから、上部消化管出血による出血性ショックの初期段階にあると考えられます。
他の選択肢の分析(下部消化管・胆道系)
4 結腸 / 5 直腸(下部消化管):
大腸や直腸などの出口に近い場所で出血した場合、血液が酸化される前に排泄されるため、「鮮血便(明るい赤色)」や「暗赤色便」になります。黒色便になることは通常ありません。
2 胆嚢:
胆嚢の疾患(胆嚢炎など)では、右上腹部痛や発熱、黄疸が見られますが、便が黒くなることはありません。逆に胆道が閉塞すると、便の色が白っぽくなる「灰白色便」が見られることがあります。
3 虫垂:
虫垂炎(いわゆる盲腸)は右下腹部痛が主症状であり、通常は下血を伴いません。
救急救命士としての臨床的視点:消化管出血のアセスメント
現場で消化管出血を疑う傷病者に接した際は、以下のポイントが重要です。
出血量の推定:
本症例のように、黒色便を「失禁」している状況は、本人の自覚以上に大量の出血が体内で起きているサインです。ショック指数(脈拍÷収縮期血圧)を計算すると「108 ÷ 98 ≒ 1.1」となり、1リットル程度の出血がある可能性を示唆しています。
既往歴と内服薬の確認:
「胃潰瘍の既往があるか」「痛み止め(NSAIDs)や血液をサラサラにする薬(抗血栓薬)を飲んでいるか」を確認します。これらは上部消化管出血のリスクを高めます。
バイタルサインの推移:
現場では安定して見えても、搬送中に急激に血圧が下がる(ショックに陥る)危険が高いです。高濃度酸素投与と全開に近い輸液準備を行いながら、速やかに搬送する必要があります。
まとめ:
「黒い便(タール便) = 胃・十二指腸(上部消化管)からの出血」
「赤い便 = 大腸・直腸(下部消化管)からの出血」
この違いを明確に覚えておきましょう。
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