2026年1月6日火曜日

第48回D問題 第17問 急性心不全(急性肺水腫)の血行動態(メカニズム)を問う問題

 第48回救急救命士国家試験D問題はこちら

17 67歳の女性。昨夜から呼吸がしにくいと訴えていた。今朝になってピンク色の痰が出たため、家族が救急要請した。

 救急隊到着時観察所見:意識JCS1。呼吸数32/分。脈拍110/分。血圧180/110mmHgoSpO2値86%。全肺野で水泡音を聴取し、両下肢に浮腫を認める。

 この傷病者について最も考えられる病態はどれか。1つ選べ。

1 後負荷が低下している。

2 前負荷が増大している。

3 肺水分量が減少している。

4 1回拍出量が増大している。

5 左室駆出率が上昇している。


解答 2


【AIによる回答】


第17問は、急性心不全(急性肺水腫)の血行動態(メカニズム)を問う問題です。


解説:急性心不全と前負荷・後負荷

正解は2(前負荷が増大している)です。

この傷病者の所見を整理すると、以下のようになります。

  • ピンク色の痰・全肺野の水泡音: 心臓(左心系)が血液を送り出せず、肺に血液が停滞して水分が漏れ出している「肺水腫」の典型的な所見です。

  • 両下肢の浮腫: 全身の静脈血も戻りにくくなり、水分が溜まっている状態です。

  • 高血圧(180/110mmHg): 心臓が必死に送り出そうとする抵抗(後負荷)が非常に高い状態です。

2 前負荷(ぜんふか)が増大している:

  • 「前負荷」とは、心臓に入る前にかかっている負担(静脈から戻ってくる血液量や、心臓が広がる時の圧)のことです。

  • 心不全では、血液をうまく送り出せないために、心臓の中に血液が余り、さらに静脈側にも血液が渋滞します。このように「心臓に戻る血液(水分)が過剰で、心臓がパンパンに膨らんでいる状態」を、前負荷が増大していると言います。

  • 本症例の下肢浮腫や肺水腫は、この前負荷が限界を超えた結果です。


他の選択肢の分析

  • 1 後負荷が低下している:

    「後負荷」とは、心臓が血液を送り出すときにかかる抵抗(主に血圧)のことです。血圧が180/110mmHgと高いため、むしろ後負荷は著しく増大しています。

  • 3 肺水分量が減少している:

    水泡音が聞こえ、ピンク色の痰(血液の混じった水分)が出ているため、肺水分量は著しく増加しています。

  • 4 1回拍出量が増大している / 5 左室駆出率が上昇している:

    これらは「心臓のポンプとしての元気の良さ」を示します。心不全の状態では、心臓がへたっているため、これらは低下しているのが一般的です。


救急救命士としての臨床的視点:肺水腫の対応

  1. 「ピンク色の痰」は緊急サイン:

    これは肺水腫が極めて深刻であることを示す特徴的なサインです。直ちに高濃度酸素投与を行い、必要であればバッグ・バルブ・マスクによる補助換気(圧力をかけて肺の水を押し戻す)を検討します。

  2. 起坐位(きざい)の保持:

    第9問でもあった通り、上半身を起こすことで心臓に戻る血液量(前負荷)を物理的に減らし、呼吸を楽にします。

  3. バイタルサインの解釈:

    高血圧は心不全の「原因」であると同時に、心臓が苦しいために交感神経が興奮した「結果」でもあります。

まとめ:

心不全で体がむくみ、肺に水が溜まる = 心臓への戻り(前負荷)が多すぎる状態

この関係性をしっかりと理解しておきましょう。

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プロフィール

  某政令指定都市 指導救命士 指導係長を経て救命士王となる。