19 80歳の男性。施設入所中である。「右手が動かない」とのことで救急要請した。出迎えた介護士が次のように語った。
「変形性関節症のため、元々右下肢の痛みや動かしにくさがありました(A)。2、3日前から少し元気がなく(B)、今朝は少し咳をしていました(C)。朝食を普通に食べ始めましたが、途中から箸を持てなくなったといい出しました(D)。食欲もないようです(E)。様子がおかしいので救急要請しました。」
介護士の言葉の中で、緊急性が高いと判断する根拠となるのはどれか。1つ選べ。
1 A
2 B
3 C
4 D
5 E
解答 4
【AIによる回答】
第19問は、家族や介護者からの情報(門診・病歴)の中から、「急性発症の神経症状」という最も緊急性の高いサインを特定する問題です。
解説:脳卒中を疑う「突然の症状」
正解は4(D:途中から箸を持てなくなった)です。
救急現場において、緊急度を判断する最大の鍵は「いつから、どのような症状が起きたか」という時間的経過(エピソード)にあります。
4 D:途中から箸を持てなくなった:
食事という動作の「途中から」突然、手に力が入らなくなった、あるいは動かせなくなったことを示しています。これは急性発症の運動麻痺であり、脳卒中(脳梗塞や脳出血)の典型的な初期症状です。
「突然(Sudden)」起きた神経症状は、一分一秒を争う「タイムクリティカル(時間依存性)」な病態であるため、最も緊急度が高いと判断します。
他の選択肢の分析
1 A(元々右下肢の痛みや動かしにくさ):
「元々」ある症状は既往症や慢性的な状態であり、今回の緊急要請の直接的な原因(急性増悪)としての優先順位は低くなります。
2 B(2、3日前から少し元気がない)/ 3 C(今朝は少し咳をしていた)/ 5 E(食欲もない):
これらは高齢者によく見られる非特異的な症状です。感染症(肺炎や尿路感染症)などの可能性を示唆しますが、「箸を持てなくなった」という劇的な神経症状に比べると、直ちに生命や機能予後に直結する緊急度は相対的に低くなります。
救急救命士としての臨床的視点:脳卒中アセスメント
シンシナティ院前脳卒中スケール(CPSS):
介護士から「箸を持てなくなった」という情報を得たら、直ちに以下の3点を確認します。
顔面の歪み: 笑ってもらい、左右対称か確認。
腕の偏位(アームドロップ): 目を閉じて両腕を前に出してもらい、片方が下がらないか確認。
言葉の異常: 「ラリルレロ」や短い文章を言ってもらい、呂律が回っているか確認。
発症時刻(Last Known Well)の特定:
脳梗塞の場合、t-PA治療(血栓溶解療法)などが行える時間に制限があります。「朝食の途中(何時何分頃か)」という情報は、病院での治療方針を決定する極めて重要なデータになります。
既往症との差別化:
選択肢A(元々の足の悪さ)を知っておくことで、「今回の麻痺は手だけなのか、それとも元々悪い足もさらに悪くなっているのか」という比較が可能になります。
まとめ:
「『突然』起きた『片側の麻痺(持てない、歩けない、喋れない)』は、脳卒中を第一に疑う。」
介護士や家族の何気ない言葉の中から、この「時間的経過」と「機能欠損」を鋭く聞き取ることが救急隊には求められます。
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