2026年1月6日火曜日

第48回D問題 第19問 家族や介護者からの情報(門診・病歴)の中から、「急性発症の神経症状」という最も緊急性の高いサインを特定する問題

 第48回救急救命士国家試験D問題はこちら

19 80歳の男性。施設入所中である。「右手が動かない」とのことで救急要請した。出迎えた介護士が次のように語った。

 「変形性関節症のため、元々右下肢の痛みや動かしにくさがありました(A)。2、3日前から少し元気がなく(B)、今朝は少し咳をしていました(C)。朝食を普通に食べ始めましたが、途中から箸を持てなくなったといい出しました(D)。食欲もないようです(E)。様子がおかしいので救急要請しました。」

 介護士の言葉の中で、緊急性が高いと判断する根拠となるのはどれか。1つ選べ。

1 A

2 B

3 C

4 D

5 E


解答 4


【AIによる回答】


第19問は、家族や介護者からの情報(門診・病歴)の中から、「急性発症の神経症状」という最も緊急性の高いサインを特定する問題です。


解説:脳卒中を疑う「突然の症状」

正解は4(D:途中から箸を持てなくなった)です。

救急現場において、緊急度を判断する最大の鍵は「いつから、どのような症状が起きたか」という時間的経過(エピソード)にあります。

  • 4 D:途中から箸を持てなくなった:

    • 食事という動作の「途中から」突然、手に力が入らなくなった、あるいは動かせなくなったことを示しています。これは急性発症の運動麻痺であり、脳卒中(脳梗塞や脳出血)の典型的な初期症状です。

    • 「突然(Sudden)」起きた神経症状は、一分一秒を争う「タイムクリティカル(時間依存性)」な病態であるため、最も緊急度が高いと判断します。


他の選択肢の分析

  • 1 A(元々右下肢の痛みや動かしにくさ):

    「元々」ある症状は既往症や慢性的な状態であり、今回の緊急要請の直接的な原因(急性増悪)としての優先順位は低くなります。

  • 2 B(2、3日前から少し元気がない)/ 3 C(今朝は少し咳をしていた)/ 5 E(食欲もない):

    これらは高齢者によく見られる非特異的な症状です。感染症(肺炎や尿路感染症)などの可能性を示唆しますが、「箸を持てなくなった」という劇的な神経症状に比べると、直ちに生命や機能予後に直結する緊急度は相対的に低くなります。


救急救命士としての臨床的視点:脳卒中アセスメント

  1. シンシナティ院前脳卒中スケール(CPSS):

    介護士から「箸を持てなくなった」という情報を得たら、直ちに以下の3点を確認します。

    • 顔面の歪み: 笑ってもらい、左右対称か確認。

    • 腕の偏位(アームドロップ): 目を閉じて両腕を前に出してもらい、片方が下がらないか確認。

    • 言葉の異常: 「ラリルレロ」や短い文章を言ってもらい、呂律が回っているか確認。

  2. 発症時刻(Last Known Well)の特定:

    脳梗塞の場合、t-PA治療(血栓溶解療法)などが行える時間に制限があります。「朝食の途中(何時何分頃か)」という情報は、病院での治療方針を決定する極めて重要なデータになります。

  3. 既往症との差別化:

    選択肢A(元々の足の悪さ)を知っておくことで、「今回の麻痺は手だけなのか、それとも元々悪い足もさらに悪くなっているのか」という比較が可能になります。

まとめ:

『突然』起きた『片側の麻痺(持てない、歩けない、喋れない)』は、脳卒中を第一に疑う。

介護士や家族の何気ない言葉の中から、この「時間的経過」と「機能欠損」を鋭く聞き取ることが救急隊には求められます。

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プロフィール

  某政令指定都市 指導救命士 指導係長を経て救命士王となる。