20 78歳の男性。旅行で長時間座席に座っていて立ち上がったところ、突然、呼吸困難が出現したため救急要請された。
救急隊到着時観察所見:意識JCS1。呼吸数36/分。脈拍126/分、整。血圧80/54mmHgoSpO2値88%。
この病態の原因はどれか。1つ選べ。
1 ブラの破裂
2 肺胞の溢水
3 気管支の炎症
4 上気道の閉塞
5 肺動脈塞栓
解答 5
【AIによる回答】
第20問は、肺血栓塞栓症(エコノミークラス症候群)の典型的な症例判断に関する問題です。
解説:肺血栓塞栓症のアセスメント
正解は5(肺動脈塞栓)です。
この傷病者の状況には、肺血栓塞栓症を疑うための「完璧な条件」が揃っています。
5 肺動脈塞栓:
リスク要因: 「旅行で長時間座席に座っていた」という状況は、下肢の静脈に血の塊(深部静脈血栓)ができやすい環境です。
発症のきっかけ: 「立ち上がったところ、突然」という経過は、立ち上がる動作によって血流が変化し、下肢でできた血栓が剥がれて血流に乗り、心臓を経由して肺の血管(肺動脈)に詰まったことを示唆します。
身体所見: 肺動脈が塞がると、ガス交換ができなくなるため「急激な低酸素(SpO2 88%)」と、酸素を取り込もうとする「頻呼吸(36/分)」が起こります。また、肺の血流が遮断されることで心臓が血液を送り出せなくなり、「血圧低下(80/54mmHg)」を招く、極めて緊急度の高いショック状態です。
他の選択肢の分析
1 ブラの破裂(自然気胸):
突然の呼吸困難の原因にはなりますが、長時間座位などのリスク要因との関連は肺塞栓ほど強くありません。
2 肺胞の溢水(肺水腫):
心不全などで肺に水が溜まる状態ですが、通常は「起坐呼吸(座ると楽になる)」や「水泡音」が特徴です。
3 気管支の炎症(喘息発作など):
「ヒューヒュー(笛性喘鳴)」という呼吸音が特徴であり、長時間座位からの立ち上がりで突然発症するパターンとは異なります。
4 上気道の閉塞(窒息など):
異物誤嚥などが原因ですが、本症例の経過(旅行・座位)とは一致しません。
救急救命士としての臨床的視点:キラー・チェストペインの鑑別
肺塞栓の「3つのサイン」:
現場で「長時間同じ姿勢」+「立ち上がった直後の呼吸困難」+「原因不明のショック(血圧低下)」を見たら、真っ先に肺塞栓を疑います。
身体所見の落とし穴:
肺塞栓の恐ろしい点は、肺の血管が詰まっているだけで気道には問題がないため、「聴診しても呼吸音は綺麗(異常がない)」ことが多い点です。「音は綺麗なのに、猛烈に苦しがって酸素も低い」という乖離が重要な手がかりになります。
現場での対応:
絶対安静が原則です。血栓がさらに飛ぶのを防ぐため、傷病者を歩かせたり過度に動かしたりしてはいけません。高濃度酸素を投与し、速やかに循環器・呼吸器の高度な治療が可能な病院へ搬送します。
まとめ:
「長時間座位 + 立ち上がり + 突然の呼吸困難 = 肺動脈塞栓(エコノミークラス症候群)」
この典型的なエピソードは、試験でも実現場でも非常に重要です。
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