25 30歳の男性。いつもと様子が異なるため家族が救急要請した。
救急隊到着時観察所見:意識JCS2呼吸数24/分。脈拍90/分。血圧130/70mmHg。体温38.1℃。SpO2値99%。名前、生年月日はいえるが、不穏状態で幻覚妄想がある。
頭痛とめまいとを訴え、左上肢の脱力を認める。既往は特にないという。
この傷病者で最も考えられる疾患はどれか。1つ選べ。
1 脳炎
2 脳梗塞
3 脳挫傷
4 脳出血
5 統合失調症
解答 1
【AIによる回答】
第25問は、若年者の意識障害、精神症状、および局所神経症状を伴う急性脳炎に関する問題です。
解説:脳炎の臨床徴候とアセスメント
正解は1(脳炎)です。
この傷病者の所見を統合すると、単なる精神疾患や脳血管障害(脳卒中)だけでは説明がつかない、炎症性の病態が浮かび上がります。
1 脳炎:
発熱(38.1℃): 体内に炎症があることを示します。
精神症状(不穏・幻覚妄想): 脳の広範囲に炎症が及ぶことで、意識混濁や異常行動、幻覚などが現れます。
局所神経症状(左上肢の脱力): 炎症が脳の特定の部位(右側の運動野など)に強く出ると、脳梗塞や脳出血のように麻痺が出現することがあります。
年齢(30歳): 若年者から中年層において、既往歴がない中で「発熱 + 精神症状 + 神経症状」が急激に現れた場合、ウイルス性脳炎(ヘルペス脳炎など)を第一に疑う必要があります。
他の選択肢の分析
2 脳梗塞 / 4 脳出血(脳卒中):
麻痺や頭痛の原因になりますが、通常これほどの発熱が発症初期から見られることは稀です。また、30歳という若さで既往歴なしに発症する可能性は、脳炎に比べれば低くなります。
3 脳挫傷:
外傷(事故や転落)による脳のダメージですが、本症例では受傷機転(ケガをしたエピソード)がありません。
5 統合失調症:
幻覚や妄想といった精神症状は合致しますが、「38.1℃の発熱」や「上肢の脱力(麻痺)」、「頭痛」といった身体的・神経学的異常は、統合失調症の主症状ではありません。これらは器質的な(脳そのものの病変による)異常を示しています。
救急救命士としての臨床的視点:精神症状の「裏」を読む
「身体疾患による精神症状」を見逃さない:
暴れている、または幻覚を見ている傷病者に出会った際、安易に精神疾患と決めつけるのは危険です。必ず体温を測り、瞳孔や麻痺の有無を確認します。「熱がある精神症状」は、脳炎や髄膜炎、敗血症などの重症疾患のサインです。
髄膜刺激症状の確認:
現場では「首の硬直(項部硬直)」がないかを確認します。脳炎や髄膜炎では、首を前に曲げようとすると抵抗や痛みが生じることがあります。
迅速な搬送先選定:
脳炎は進行が早く、けいれん重積や脳浮腫による脳ヘルニアを招く恐れがあります。脳神経外科だけでなく、神経内科や集中治療の体制が整った医療機関への搬送が必要です。
まとめ:
「発熱 + 精神症状(幻覚・妄想) + 神経症状(麻痺・頭痛) = 脳炎を疑う」
心の病気に見える症状の裏に、命に関わる脳の炎症が隠れている可能性を常に意識しましょう。
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