26 80歳の男性。発熱、悪寒戦慄および全身倦怠感を訴えたため家族が救急要請した。
救急隊到着時観察所見:意識清明。呼吸数24/分。脈拍112/分、整。血圧110/82mmHg。体温39.0°C。SpO2値94%前立腺肥大による排尿困難のため、かかりつけ医により1か月前から尿道カテーテルが挿入され排尿バッグが接続されている。バッグ内には尿が貯留し白濁している。
この傷病者で疑うべき疾患はどれか。1つ選べ。
1 慢性腎不全
2 急性腎盂腎炎
3 尿管結石
4 急性前立腺炎
5 尿道損傷
解答 2
【AIによる回答】
第26問は、高齢者のカテーテル関連尿路感染症(CAUTI)から波及した、深刻な上部尿路感染症に関する問題です。
解説:急性腎盂腎炎(きゅうせいじんうじんえん)の判断
正解は2(急性腎盂腎炎)です。
傷病者の背景とバイタルサインから、尿路を介した感染が腎臓にまで達し、全身症状を引き起こしていることが分かります。
2 急性腎盂腎炎:
感染源: 1か月前から挿入されている「尿道カテーテル」は、細菌が体内に侵入する大きなリスク(経路)となります。バッグ内の尿が「白濁」しているのは、膿や細菌が混じっている証拠です。
全身症状: 39.0℃の高熱に加え、「悪寒戦慄(ガタガタ震える)」があるのは、細菌が血液中に入り込もうとしている、あるいは血流に乗って全身に回っている(菌血症・敗血症)可能性を示唆する重症サインです。
バイタルサイン: 意識は清明ですが、頻呼吸(24/分)と頻脈(112/分)を認めており、感染に対する全身性炎症反応が強く出ています。
他の選択肢の分析
1 慢性腎不全:
腎臓の機能が長期間かけて徐々に低下する状態です。高熱や尿の白濁、悪寒といった急性の感染症状が主訴となる疾患ではありません。
3 尿管結石:
第24問で解説した通り、突然の激痛が主症状です。結石に伴い感染を起こすこともありますが、本症例の「白濁した尿道カテーテル」という状況からは、カテーテル由来の感染症を第一に疑います。
4 急性前立腺炎:
同様に高熱や排尿困難を呈しますが、前立腺肥大がありカテーテルが留置されている状況で、尿が白濁し全身倦怠感が強い場合は、より広範な感染である腎盂腎炎や尿路性敗血症のリスクを優先して考慮します。
5 尿道損傷:
外傷(股間を打つなど)や、カテーテルを無理に引き抜いたり挿入したりした際に起こります。主症状は「尿道口からの出血」や「痛み」であり、発熱や尿の白濁とは無関係です。
救急救命士としての臨床的視点:尿路性敗血症の警戒
「悪寒戦慄」を見逃さない:
高齢者が「ガタガタ震えるほどの寒気」を訴え、高熱を出している場合、それは単なる風邪ではなく、敗血症(Sepsis)へ移行する直前、あるいは移行中のサインです。血圧がまだ維持されていても(110/82mmHg)、急激にショック状態へ陥る危険があります。
カテーテルの観察:
現場では、尿バッグ内の尿の色(混濁、血尿)だけでなく、カテーテルが折れ曲がっていないか、逆流していないかを確認します。また、尿が全く出ていない場合は、閉塞による閉塞性腎盂腎炎(緊急処置が必要)の可能性も考えます。
qSOFAの再確認:
呼吸数 24/分(22以上で1点)
意識清明(0点)
血圧 110mmHg(100超のため0点)
現時点では1点ですが、高齢者で感染源がはっきりしているため、搬送中も頻回に血圧を測定し、ショックへの移行を警戒する必要があります。
まとめ:
「カテーテル留置 + 尿の白濁 + 高熱・悪寒戦慄 = 急性腎盂腎炎(敗血症のリスクあり)」
高齢者の尿路感染症は「静かなる殺人者」になり得ることを念頭に、迅速な医療機関への搬送を行いましょう。
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