27 60歳の男性。自宅で動けなくなっているところを友人が発見し救急要請した。
救急隊到着時観察所見:意識JCS3。呼吸数20/分。脈拍88/分、整。血圧100/82mmHg。SpO2値96%。手足の筋力の著しい低下を認める。友人によれば、酒だけを摂取し食事はほとんど摂れていなかったとのこと。1か月位前から疲労感、記憶力の低下および下肢の異常感覚があり、1週前から起立が困難とのこと。
この病態の原因として欠乏が推定されるビタミンはどれか。1つ選べ。
1 葉酸
2 ビタミンA
3 ビタミンC
4 ビタミンB1
5 ビタミンB12
解答 4
【AIによる回答】
第27問は、偏った食生活(アルコール依存的)によって引き起こされるビタミン欠乏症、特に「脚気(かっけ)」や「ウェルニッケ脳症」に関する問題です。
解説:ビタミンB1(チアミン)欠乏の影響
正解は4(ビタミンB1)です。
この傷病者の背景と症状は、ビタミンB1が欠乏した際に起こる典型的な病態を示しています。
4 ビタミンB1(チアミン):
原因: 「お酒ばかり飲み、食事をほとんど摂っていない」という状況が最大のヒントです。アルコールの代謝には大量のビタミンB1が消費されるため、飲酒家は非常に欠乏しやすい状態にあります。
症状の推移:
末梢神経障害(脚気): 1ヶ月前からの「下肢の異常感覚」や「筋力の低下(起立困難)」は、末梢神経が侵される「乾性脚気」の症状です。
ウェルニッケ脳症: 「記憶力の低下」や「意識障害(JCS 3)」は、脳(中枢神経)に支障が出始めているサインです。このまま放置すると、回復不能な記憶障害(コルサコフ症候群)や昏睡に至る危険があります。
他の選択肢の分析
1 葉酸 / 5 ビタミンB12:
これらが欠乏すると「巨赤芽球性貧血」が起こります。B12欠乏では神経症状(亜急性連合性脊髄変性症)も出ますが、アルコール多飲による急激な筋力低下や意識障害の文脈ではB11がより優先されます。
2 ビタミンA:
欠乏すると「夜盲症(鳥目)」や皮膚の乾燥などが起こりますが、筋力低下や意識障害の直接的な原因にはなりません。
3 ビタミンC:
欠乏すると「壊血病(出血しやすくなる)」が起こります。
救急救命士としての臨床的視点:搬送と現場の注意
「低血糖」との鑑別:
食事を摂らずに酒ばかり飲んでいる人は、肝臓での糖新生が抑制され、深刻な低血糖を起こしている可能性も極めて高いです。現場では意識障害の原因として低血糖も同時に疑い、可能であれば血糖測定を行います。
安易なブドウ糖投与の罠:
ウェルニッケ脳症が疑われる傷病者に、ビタミンB1を補わずに「高濃度ブドウ糖」だけを投与すると、ブドウ糖を代謝するために残ったわずかなB1が使い果たされ、病態が急激に悪化(脳症の増悪)することが知られています。病院では通常、B1とブドウ糖をセットで投与します。
社会的な背景の把握:
このような症例は、セルフネグレクトや孤立死予備軍である場合が多く、医療的な治療だけでなく、搬送後の福祉的な介入(生活保護や介護保険の申請など)が必要になるケースが多々あります。
まとめ:
「酒 + 食事抜き + 足のしびれ・筋力低下 + 意識障害 = ビタミンB1欠乏」
この「アルコールとB1の関係」は、救急医学における非常に有名な組み合わせです。
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