40 70歳の独居男性。真冬の朝、隣に住む家族が屋内の廊下で倒れているところを発見し救急要請した。
救急隊到着時観察所見:意識JCS300。呼吸数6/分。脈拍40/分。血圧70/40mmHg。体温測定不可(32℃未満)。SpO2値90%(室内気)。フェイスマスク酸素6L投与下で92%。
この病態について適切なのはどれか。1つ選べ。
1 軽度低体温症である。
2 致死性不整脈が発生しやすい。
3 直近二次医療機関を選定する。
4 シバリングは高頻度に観察される。
5 ラリンゲアルマスク挿入の指示要請を行う。
解答 2
【AIによる回答】
第40問は、偶発性低体温症の重症度判断と、搬送・処置における注意点に関する問題です。
解説:中等度〜高度低体温症の病態生理
正解は2(致死性不整脈が発生しやすい)です。
傷病者のバイタルサイン(体温32℃未満、著しい徐脈、低血圧、意識障害)から、重症の低体温症であることが分かります。
2 致死性不整脈が発生しやすい:
体温が30℃を下回ると、心臓の筋肉(心筋)が非常に不安定(過敏)になります。
わずかな刺激(手荒な体位変換や気道挿入などの刺激)が引き金となり、心室細動(VF)などの致死性不整脈を誘発しやすいため、極めて慎重な取り扱いが必要です。
他の選択肢の分析
1 軽度低体温症である:
低体温症の分類では、32〜35℃が軽度、28〜32℃が中等度、28℃未満が高度とされます。本症例は「32℃未満」で徐脈・低血圧を伴っており、中等度から高度の分類に該当します。
3 直近二次医療機関を選定する:
重症の低体温症は、復温に伴う血圧低下(リウォーミング・ショック)や致死性不整脈への対応が必要です。人工心肺(PCPS/ECMO)などを用いた積極的な内部加温ができる、高度救命救急センター(三次医療機関)を選定すべきです。
4 シバリングは高頻度に観察される:
シバリング(身震いによる熱産生)は体温を維持しようとする防御反応ですが、体温が30〜31℃以下になると消失します。本症例のような重症例では観察されないことが多いです。
5 ラリンゲアルマスク挿入の指示要請を行う:
前述の通り、低体温下の心臓は非常に過敏です。気道確保器具の挿入刺激が心室細動を誘発する恐れがあるため、自発呼吸がある程度維持されている(呼吸数6/分と微弱ではありますが)段階での愛護的でない気道操作は慎重であるべきです。
救急救命士としての臨床的視点:愛護的取り扱いの徹底
「Gentle Handling(愛護的取り扱い)」:
重症低体温症の傷病者を動かす際は、「心臓を揺らさない」くらいの気持ちで、複数人で静かに移動させます。衣服を切る際なども、体を大きく動かさないよう注意します。
死の判定の慎重さ:
低体温症では「温まるまでは死んだと言えない(Not dead until warm and dead)」という格言があります。一見、心停止に見えても、脳が保護されていて蘇生する可能性があるため、長時間の蘇生が考慮されます。
現場での保温:
乾いた毛布で包み、さらなる放熱を防ぎます。現場での積極的な加温(お湯につけるなど)は、末梢血管が広がって冷たい血液が心臓に戻り、心停止を招く(アフタードロップ)恐れがあるため、救急現場では「さらなる冷却の防止」を主眼に置きます。
まとめ:
「32℃未満の低体温 = 心臓がガラス細工のように壊れやすい(致死性不整脈) = 極めて静かに搬送!」
この知識は、冬場の救急現場において最も重要な安全管理の一つです。
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