72 発熱による生体機能の変化について正しいのはどれか。1つ選べ。
1 免疫能の増強
2 循環の負担軽減
3 全身代謝の低下
4 二次性脳損傷の軽減
5 末梢血管抵抗の増大
解答 1
【AIにょる解説】
第72問「発熱による生体機能の変化」について、生体防御反応と身体への負荷の両面から詳しく解説します。
簡易解説
正解は1です。
発熱は、ウイルスや細菌などの外敵から体を守るための防御反応の一つです。体温が上昇することで、白血球の遊走能力が高まったり、リンパ球の増殖が促進されたりと、免疫能の増強が起こります。他の選択肢(代謝、循環、脳への影響など)は、いずれも発熱によって「増大・悪化」する方向の変化であり、「軽減・低下」するという記述は誤りです。
詳細解説
救急現場において発熱は非常に頻繁に見られる主訴ですが、単に「熱がある」だけでなく、その熱が体にどのような生理的インパクトを与えているかを理解することが重要です。
1. 正解の根拠:免疫能の増強
私たちの体は、病原体が侵入すると視床下部にある体温調節中枢の設定温度(セットポイント)を引き上げます。
機序: 体温が高まることで、細菌の増殖が抑制される一方で、免疫系が活性化します。マクロファージや好中球などの食細胞の活性が上がり、抗体産生やインターフェロンの働きも効率化されます。このように、発熱は「生体防御」として有利に働く側面を持っています。
2. 他の選択肢(負の影響)の分析
発熱は免疫を助ける一方で、全身の臓器には強い「ストレス」を与えます。
選択肢2(循環の負担軽減)× → 〇 負担増大:
体温が1℃上昇するごとに、心拍数は約10〜15回/分増加します。心拍出量を増やして対応しようとするため、心臓への負担は増大します。
選択肢3(全身代謝の低下)× → 〇 代謝の亢進:
体温が1℃上昇すると、基礎代謝率は約10〜13%増加します。酸素消費量やエネルギー消費が急増するため、呼吸数も増えます。
選択肢4(二次性脳損傷の軽減)× → 〇 脳損傷の悪化:
救急・集中治療領域で極めて重要です。脳卒中や頭部外傷の傷病者において、発熱は脳細胞の代謝をさらに早め、酸素不足を助長し、二次性脳損傷を悪化させます。そのため、脳外科疾患では厳格な体温管理(平熱維持)が求められます。
選択肢5(末梢血管抵抗の増大)× → 〇 末梢血管の拡張(発熱の極期):
熱を体外へ逃がそうとする段階(極期)では、皮膚の血管が拡張し、放熱を促します。これにより、逆に末梢血管抵抗は低下しやすくなります。※ただし、熱が上がる直前の「悪寒(おかん)・戦慄」の段階では、熱を逃がさないように血管が収縮します。
救急救命士としての臨床的視点
救急活動において、高熱の傷病者を評価する際は以下の3点を意識します。
酸素需要の増大:
高熱があるだけで酸素を激しく消費します。特に高齢者や心疾患、呼吸器疾患がある傷病者は、熱による代謝亢進に耐えきれず、心不全や呼吸不全を来しやすいため、早めの酸素投与を検討します。
脱水への注意:
代謝亢進と不感蒸泄(皮膚や呼吸からの水分蒸発)の増加により、高熱の傷病者は容易に脱水に陥ります。皮膚の乾燥や粘膜の状態を注意深く観察します。
脳保護の視点:
意識障害がある傷病者、特に脳血管障害が疑われるケースでの発熱は「脳にとっての毒」です。現場や搬送中から、頭部や頸部、腋窩を冷却するなどの処置が、予後を改善する鍵となります。
このように、発熱は「免疫を強める」という味方の側面と、「心臓や脳に負担をかける」という敵の側面を併せ持っていることを理解しておきましょう。
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