12 80歳の男性。呼吸困難のため妻が救急要請した。
救急隊到着時観察所見:意識JCS300、呼吸数36/分。脈拍100/分、整。血圧168/92mmHg。Sp02値90%。努力呼吸が著明なため酸素投与を行った。
傷病者は肺癌と骨転移のため入院して緩和治療を受けていたが「最期は家で過ごしたい。」と強く希望し、2か月前に退院し、在宅医療を受けている。家で看取るつもりだったが、あまりにも息苦しそうだったので救急要請したという。本人との二人暮らしとのことである。
救急隊が優先して実施すべき対応はどれか。1つ選べ。
1 妻以外の家族を探す。
2 MC医師に助言要請を行う。
3 主治医に連絡し判断を問う。
4 ケアマネジャーに連絡する。
5 救命救急センターに搬送する。
解答 3
正解:3(主治医に連絡し判断を問う)
解説
在宅での看取りを前提としている傷病者において、救急要請がなされた場合の対応は、通常の救急活動とは異なる視点が必要になります。
主治医との連携が最優先: この傷病者は「最期は家で過ごしたい」という強い希望を持って退院しており、在宅医(主治医)による管理下にあると考えられます。救急要請のきっかけは「苦痛(呼吸困難)の除去」ですが、救命センターへの搬送や侵襲的な蘇生処置が本人の意向に沿わない可能性があるため、病状やこれまでの合意内容(DNARの有無など)を最も把握している主治医に連絡し、指示や判断を仰ぐのが最も適切です。
他の選択肢が誤りである理由
1(妻以外の家族を探す): キーパーソンである妻が現場におり、本人の希望も明確なため、他の親族を捜索する優先順位は低いです。
2(MC医師に助言要請を行う): MC(メディカルコントロール)医師はプロトコル上の医学的助言を行いますが、個別の患者の終末期における「人生の選択」については、主治医以上の情報を持っていません。
4(ケアマネジャーに連絡する): ケアマネジャーは生活支援の調整役であり、今現在の急性増悪(呼吸困難)に対する医学的な搬送・処置の判断を行う立場にはありません。
5(救命救急センターに搬送する): 「看取り」を希望している患者を、本人の意向を確認せずに高度救急医療機関へ搬送することは、結果として過剰な延命治療に繋がり、本人の望まない最期(QOD:Quality of Death)を招く恐れがあります。
救急現場でのポイント
静岡市でも在宅医療の普及に伴い、こうした「看取り期における救急要請」への対応は重要な課題となっているかと思います。
家族の心情への配慮: 「家で看取るつもりだったが、苦しそうな姿を見て不安になった」という家族の揺らぎに寄り添うことが求められます。
主治医へのホットライン: 在宅医療を受けている場合は、救急隊から直接主治医に連絡し、「今この場でどのような処置・対応をすべきか」を相談することが、本人の尊厳を守ることにつながります。
0 件のコメント:
コメントを投稿